長びくコロナ禍の影響に加え、食費や光熱費の物価高騰が、困窮家庭の家計に重くのしかかっている。 こうした家庭を支援する団体「キッズドア」は11月28日、困窮子育て家庭へのアンケート結果を発表し、電気や暖房をつけないようにしたり、空腹をがまんしたりという深刻な状況が起こっていることを明らかにした。 キッズドアは今月、普段から食糧支援などを通してサポートしている困窮子育て家庭に対し、値上げの影響についてオンラインで聞き、1846人から回答を得た。(調査期間:2022年11月11~16日) 回答者のうち、ほぼ全員が物価高騰により家計が厳しくなったと答えていた。(「とても厳しくなった」が74%、「やや厳しくなった」26%) 家計維持のために、84%が「食費」を減らし、その内容としては、63%が「肉・魚を減らした」(複数回答可)、50%が「野菜を減らした」、49%が「子どもに食べさせるために親の食事を減らしたり抜いたりしている」、17%が「朝ごはんを抜くようになった」と答えていた。 回答者の1日の平均的な食事回数では、子どもの68%が「3回」、13%が「2回」、0.2%が「1回」なのに対し、保護者では35%が「3回」、47%が「2回」、17%が「1回」という結果に。 食品などの値上げにより、子どもも十分な食事が取れなくなり「必要な栄養がとれていない」(70%)、「勉強に集中できなくなった」(31%)、「風邪などの病気になりやすくなった」(28%)と、多くの保護者が子どもの心身の成長への悪影響を訴えていた。 アンケートの自由解答欄では、「飢え死にしてしまいそう」「このままでは生きていけません」「本当に生活するのが厳しい。スーパーに行っても『高いからやめよう』とかばかり」との声が寄せられた。 物価高騰を実感している項目としては、最も多かった「食費」(99%)に次ぎ、「光熱費」が85%で2番目に多かった。(複数回答可) 値上げによる生活の変化でも、「暖房をつけないようにしている」が73%で最も多く、「電気をつけないようにしている」も51%あった。 《この冬の在宅勤務中は極力暖房をつけず、外出用のダウンコートを着用して過ごそうと思います。今まで通りの値段に戻ることはもうないでしょうか。将来が本当に不安でしかないです》 《電気・ガスが高くて、この冬は暖房をつけないと決めたが、冬を越せるのか不安》 《電気代を節約するために学習する時間がとれなくなった。テストの点数がどんどん落ちている》 「困窮ひとり親家庭は、コロナ禍の影響を受けていましたが、収入面では回復できていない状況です。暖房や電気をつけないなど、生活に大きな支障をきたしています」 「このような立場にある人たちは、自分からなかなか声を上げられません。でも、子どもと親が電気や暖房もつけず、十分なごはんも食べられずにアパートで震えているというような状況は、この日本でも、本当に全国各地で起こっています」

約2割「経済的な理由で志望校を諦めた」。進学や塾を諦める子どもも

物価の上昇は家計を圧迫し、学費などの捻出にも大きな影響を与えている。 高校生の子どもがいる困窮家庭では、値上げの影響として、「塾や予備校に行けない」(54%)、「模試が受験できない」(23%)、「経済的な理由で志望校を諦めた」(19%)などがあげられた。 自由回答欄では、「親としては非常につらい」「本当は(進学したい)気持ちを優先して応援してあげたい」との保護者の痛切な思いが綴られました。 《進学希望でしたが、家計のこと、これから進学でかかるお金のことを考えて就職に変更し、(子は)家に給料を入れるねと言っていました》 《数千円の受験料がはらえずに号泣した》 キッズドアは定期的に、サポートしている家庭に対してアンケート調査をしているが、今回初めて、値上げ等の進学への影響に関する設問を設けた。 渡辺さんは「高校生がいる家庭の約2割が『志望校をあきらめた』という結果を見て、愕然とした」とし、こう話した。 「コロナ禍や物価高騰という自分には責任がない理由で、進学や将来の夢を諦めている子たちがこんなにもたくさんいるのだとわかりました。多くのお子さんが、行きたかった大学や専門学校を諦めて就職という道を選んだり、夢を諦めている状況があります」 「子どもたちは何も悪くない。何も悪いことしていないのに、十分なご飯を食べられず、将来を諦めないといけない状況になっている」 「2020年から、コロナ禍の影響で将来を諦めることになる子どもが出てしまうと、政府に対しずっと支援を呼びかけてきた。でも、抜本的な対策が打たれなかった。政府には早急な対策と力強いメッセージで絶望している子どもや保護者を励ましてほしい」

「命を守るため」の対策、高校生への支援を提言

提言とアンケート結果は、厚労省や文科省などに提出する予定だ。 これまでにも、政府は非課税世帯向けの現金給付などをしてきたが、渡辺さんは「子育て世代は、子どもたちを食べさせて学校に行かせるために働き、納税していることが多く、非課税世帯向けの給付だけでは十分ではない」とした。 コロナ禍と値上げの影響を受ける困窮家庭に、「命を守るため」の継続的な現金給付が必要だと強調した。 また、「子どもたちが家庭の事情で進路を変えたり、夢を諦めたりすることがないように」と、児童手当の高校生段階までの延長、高等教育無償化の周知徹底や対象となる家計条件の緩和、給付型奨学金の対象拡大などを求めた。

「クリスマスや正月の費用減らす」79%

アンケートでは、値上げの影響で、今後出費を減らしたりなくしたりする予定の項目についても聞いた。 最も多かったのは「家族での外出の費用」で87%。次に「クリスマスやお正月の費用」(79%)、「水道・光熱費」(66%)が続いた。 キッズドアでは、給食などがなくなり出費がかさむ夏休み期間にも、今年、困窮世帯への食料支援を行い、2600世帯に食べ物を送っていた。 クリスマスや正月の費用を削減する家庭が多くなっている中、キッズドアではクラウドファンディングで資金を募り、年末年始に向けた食料支援を行う。 現時点でも、2300を超える困窮家庭が、年末年始の食料支援を希望しているという。目標金額は1820万円で、29日現在で、633人から1005万円が集まった。寄付は1月10日まで募る。 食料支援では、米や野菜などのほか、年末年始に向けて、年越し用のそばや餅、クリスマス用のお菓子などが送られる予定だ。 渡辺さんは「クリスマスや新年は、子どもにとっては本来、プレゼントやお年玉がもらえる、うれしい季節です。しかし困窮家庭では、お節はおろか、お餅やお米もない状況で、クリスマスプレゼントも買えません」「どうにか年を越して、なんとか2023年を迎えてほしいという気持ちです」と話した。

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